2017年8月  今 井  裕

今、弊社しずお建設運輸グループにベトナムからの技能実習生が18名(男性12名・女性6名)勤務しています。

彼らは朝早くから、夜遅くまで一生懸命働いています。

あまりの真面目さに「ベトナム人って本当に働き者ばかりだね」とリーダー格のフェン(女性)にきくと「ベトナム人だって、悪い人も狡い人もいっぱいいます。ここにいる人はみんないい人ばかりです。 社長! 良かったね!」、それにしても・・・・。

そのフェン(27歳)とゴツク(22歳)から今年の3月から自動車学校に通って自動車運転免をとりたいと相談を受けました。外国人の日本での免許取得は特例措置があって、母国語で、受験できると思っていましたが、学校の説明をうけると「英語」「中国語」「韓国語」「ポルトガル語」なら受験ができるが、残念ながら「ベトナム語」はなく、日本人と全く同じ条件だとわかりました。彼女たちは1年9力月前に日本にやってきて、漢字はもちろん、日本語は挨拶程度、通常だと「無理」と判断するところですが、この娘(こ)達だったらもしかして・・・・。

「よ一し! やらせてみよう! 徹底的に応援しよう!」と。それからの彼女たちの努力と言ったら「筆舌に尽くしがたい」といっても過言ではありません。通常の仕事をこなし、夜遅くまで、部屋の電気がついていました。私の家と彼女たちの家は隣りあわせで、私の部屋とゴックの部屋は窓から挨授できる環境です。

学校に通い始めて2力月、2人から報告、「社長! 仮免許!受かりました」「学科も受かったのか?」「はい! 受かりました、明日から路上です!」「そりゃ、すごい! 本検むけて頑張れ」。

早速、道北自動車学校にいき、佐々木校長先生に現況をきいてみました。「とにかく日本語の壁をどのように乗り越えてもらうか、その指導方法ついて職員同士で何度も話し合ってきた。適性に応じた指導を重点においてきた」と佐々木校長。なんと全校あげて取り組み、マンツーマンの指導体制をとっていただいていたのです。「彼女たちの、ひた向きさ、前向きさをみていたら、応援せずにはいられない」と佐々木校長。「社長! どうやって教育しているのですか?笑顔での挨拶、返事はどれをとっても申し分ありません」と。これは教育でも指導でもなく、彼女たちの資質です。

しかし順風満帆にいかないのも人生です。学校の実技試験は2人とも1回でパスし、旭川公安委員会試験場で本検定に臨みました。平和29年6月7日第1回目の学科試験です。無残にも2人とも玉砕。2人とも100点満点中82点、90点以上でなければ不合格。2人とも「社長! 来週頑張ります!」次週の試験結果、合格発表の電化掲示板にはフェンの16番はあってもゴックの17番はありません。フェンには、頑張ったネ!と握手をかわしましたが、ゴックは、悔しさが顔に表れていました。「ゴック! 来週は絶対に」。フェンの顔にも笑顔がありません。免許証を受け取ったフェンに、私の車を運転させ士別に戻ってきました。

しかしゴックは翌週もダメ、次もダメ、4回目もダメ。学校でを補習をやり、仕事を終えてから毎日私も一緒に過去問題を徹底的にやり、95点は軽く超えるようになりました。

5回目、掲示板に自分の番号がなかったとき、公安委員会で、目に涙をいっぱい浮かべて「社長! 私こんなに一生懸命勉強したのに・・・・、もうダメです。」と私の胸で号泣しました。私は頭をなぜながら、「今はつらくても、これからのゴックの人生にとって大きな力になるはずだ。あきらめずに頑張ろう。社長は受かるまで応援するよ」。

6回目も掲示板に番号がない!

7回目の前日、なんとゴックが「もう社長と行きたくない! 私ひとりでいきます」と言い出しました。そのときは職場だったので何も言わずに「仕事が終わったら事務所に来なさい」と指示しました。

ゴックが社長室に元気なく入ってきました。私はベトナム人は、占いやゲンを担ぐ時が多いので、てっきり私と一緒にいくと合格しないのではないかと思い、一人でいくと言い出したとばかり思っていました。ところがゴックから意外な言葉が返ってきました。「社長! 私つらいんです。黒板にあの番号がなかったときの、社長の悲しい顔をもう見たくない」とまた泣き出しました。

私は「ふざけるな! ゴック! じゃあお前は受かった喜びを独り占めする気か? ふざけるのもいいかげんにしろ!」と私も一緒に泣いていました。
ゴックも目にいっぱい涙をためて「わかりました」と言い残し帰っていきました。

7回目、私はゴックの負担を軽くしようと思い、発表前に「ゴック! 来週も来るぞ」と。ゴックは苦笑い、それでもゴックの前に女神は現れませんでした。
「社長ごめんなさい! 社長ごめんなさい!」
「大丈夫、大丈夫。 あっ、そうだ、免許受かったら社長と一緒に夏休みに車で岩手にいこう。彼に会いにいこう」と私。ゴック、目を輝かせながら「本当ですか! 頑張ります! 本当ですか?」。ゴックは、ベトナム人の実習生仲間の恋人が岩手県岩手町にいます。私も会ったことがある、イケメンの超好青年です。彼女たちの日本のお父さんとしては・・・・。

8回目7月19日(水)、この日も朝6時45分に士別を出発7時45分に免許試験場に到着。免許センターの係員の人たちも、すっかり顔見知りになりになり、ゴックに、頑張ってネ!と声をかけてくれます。私とゴックは試験のことは一切触れず、ベトナムの食べ物の話ばかりしていました。いよいよ発麦の時です。今回も「ゴック来週も来るぞ」と私。ゴックも静かにうなずいていました。「これから合格発表します。合格者の受験番号が表示されます」と場内アナウンスの声。バッと表示。ゴックの番号16番がありました。ゴックが大声で奇声をあげました。もちろんベトナム語です。バンザイをしながら、さらに日本語で「社長! やりました! やりました!」。恥も外聞も捨てて2人でハグをしながらジャンビング、泣きながら「よかった! よかった!」帰りに私のランクルをゴックは嬉しそうに運転していました。

私は既に合格していたフェンに電話し、フェンも電話の向こうで泣いているのがわかります。一番つらかったのは、フェンだったのかもしれません。自分の合格も、思いっきり喜ぶことができず、試験の度に、「今日はどうでしたか?」と電話がかかってきました。

2人一緒に勉強してきた仲間、心配していました。フェンの励ましも大きな力になったでしょう。そして、会社の仲間に連絡し、道北自動車学校に報告とお礼に伺いました。

みんなに喜んでいただきました。その時に学校の教職員と農場の職員との合同の祝勝会の開催を提案され、1週間後、盛大に行なわれました。

当日、学校の教職員のみなさんから、2人に日本の浴衣セットをプレゼントされ、2人はその浴衣を着てバーティに参加、 とっても素敵な浴衣姿でした。浴衣姿でのフェンとゴックのお礼のスピーチが最高でした。

周りの人たちの応援がなかったら合格はなかった「本当にありがとうございました」と・特にゴックの泣きながらのありがとうコールはみんなの涙を誘いました。

祝福! 祝福! の楽しいパーティでした。私にとっても素晴らしい夏の思い出になりました。